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【インタビュー】時代をリードする健康経営への取り組み/株式会社ディー・エヌ・エーCHO室室長代理:平井孝幸さん DeNA
健康 インタビュー 発酵食品 渋谷

【インタビュー】時代をリードする健康経営への取り組み/株式会社ディー・エヌ・エーCHO室室長代理:平井孝幸さん DeNA

2016年1月に発足した株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)のCHO(Chief Health Officer)室。“社員の健康サポート”をミッションとし、健康からのパフォーマンス向上をビジョンに掲げた部署として、各方面から高い注目と関心が寄せられています。

発足からもうすぐ2年。立ち上げから様々なプロジェクトを発信してきたCHO室室長代理の平井孝幸さんに、これまでの具体的な取り組みや今後の展開などさまざま伺ってきました。

お話を聞いた人
  • 平井 孝幸ひらい たかゆきさん株式会社ディー・エヌ・エー
    CHO(Chief Health Officer)室 室長代理
    健康経営アドバイザー/渋谷ウェルネスシティコンソーシアム理事長

CHO(Chief Health Officer)室とは?

株式会社ディー・エヌ・エー社員の健康経営を推進するために2016年1月に発足。南場智子代表取締役会長をチーフヘルスオフィサー(Chief Health Officer・最高健康責任者)とし、健康アドバイザーとして活躍する平井孝幸室長代理を筆頭に、社員の健康サポートと業務パフォーマンス向上を目指した様々な取り組みを展開している。

健康や食の研究を重ね、独自のスタイルを確立

まず、これまでの経緯を教えてください。

高校生の頃から健康や食に関する興味は人一倍強くて、あらゆる知識を得るために食事や運動に関する情報や書籍に注目していました。そうして得た知識を実践することも大好きだったので、食だけでなく身体を動かすことやトレーニングなども積極的に行なっていました。

そんなこともあり、DeNAには慶応義塾大学在学中にインターンをして内定をもらったのですが入社せず、他社に就職したのですが半年で辞めてしまって。その後、野菜・農業関係のベンチャー企業へ就職し、食に関わる業務を行いながら、平行して長く続けていたゴルフ事業の会社を任され、趣味と実益をかねた運営を7年間ほど行なっていました。

その頃ちょうど東日本大震災(2011年)が起こり、自分も29歳という節目の年齢だったこともあり、ふと今後のことを考えました。もっと社会と密につながり、これまで培ってきたことを発信できる仕事がしたいと思ったんです。

内定を断った後からも南場には懇意にしていただいていて、ずっとお声をかけてもらっていました。南場の理念や思いには以前から共感しており、ここでなら自分の思いを達成できるのではないかと考えて、入社を決めました。

健康や運動へ深く興味を持つきっかけはなんだったのですか?

良く聞かれるのですが、そもそも僕の健康へのこだわりの原点はゴルフなんです。高校の部活でゴルフを始めたのですが、楽しくてのめり込んだということもあり、思いのほか短期間で上達できました。

その時、本気で世界を目指したいなと考えて「ゴルフがもっと上手になるにはどういう生活をすればよいのか」ということに重点を置きはじめました。そうなると、練習以外で重要視したのがやはり食事やメンタル、生活習慣だったんです。それらを勉強しはじめたことが、そもそものきっかけでした。

しっかり健康や人体のことについて勉強したいと思い、半年間で300冊以上の書籍を読み、専門家に話を伺いに行くなど、自分なりに研究し続けました。食事・メンタル・生活などの研究に没頭し続けた結果、独自の健康スタイルの基礎を20代で確立させました。

発起人として健康経営事業の取り組みをスタート

では、CHO室への取り組みのきっかけを教えてください。

DeNA入社後、すぐに今のような取り組みが出来るわけもなく普通に過ごしていたのですが、周囲を見渡すと不健康な生活をしている社員が多いことに気づきました。その人たちに声をかけて自分なりの健康改善を伝えはじめたのが第一歩目です。

その健康改善活動が意外にも広がりをみせ、これをなんとかカタチにできないかなぁと思いはじめていた頃、日経ビジネスの特集で大手企業が健康経営に取り組んでいることを目にしました。

健康経営による事例では、社員の健康サポートによってパフォーマンスが向上し、ゆえに会社の業績が上がっている。つまり健康になることが全てのメリットにつながるという内容でした。とても衝撃的で「健康経営事業をDeNAでもやりたい」と強く思ったんです。やっとやりたいことの本質を見つけた気がしました。

「みんなが健康になることで喜びを感じる」「喜びとともに会社の生産性がアップする」という健康経営をするため、取り組みをスタートさせたのが2015年の秋頃でした。

実際にどのように立ち上がっていったのでしょう?

まずは社員の声を反映した企画書作成のため、協力者を募って健康に関するヒアリングを行なう活動から始めました。

腰痛に悩んでいる社員へ手づくりの健康グッズを渡したり、睡眠や食事に関する相談に答えたりなど、独自の健康支援活動を積極的に行なったところ「腰痛が緩和された」「冷え性が改善している」など良い意見を多数もらうようになりました。

これらの結果から「全社的に健康経営に取り組むべき」という結論を導きだし、企画書をまとめて人事責任者、ヘルスケア事業部責任者に相談。その後、取り組みの推進者CHOを南場にお願いして2016年1月にCHO室が正式に発足しました。

社内の健康促進とパフォーマンス向上が目的

しっかりプロセスを踏んですすめられたのですね。

実は最初、南場には何度も断られたんですよ(笑)。DeNAにはヘルスケア事業部もありますし、なぜ同じような部署が必要なのかって。でもそれは社内の健康促進ではなく、お客さまに発信する健康事業ですし「僕のやりたいのは足下の社内からの健康経営なんです」と何回も根気強くお伝えしました。

社外への健康発信を事業として行なっているのであれば、なおさら社内が健康について真摯に取り組んでいないと意味がないと思います。その熱意を理解いただき、今では様々なことに力添えしてもらっています。

そうなるとCHO室の役割とミッションは明確ですね。

そうですね。社員の健康促進と維持。それにともなって生産性とパフォーマンスの向上を目指すこと。これがCHO室の確固たるミッションです。現在は4人の部署ですが、最初は僕一人で立ち上げました。

まずは仲間集めからスタートしようと考え、健康推進部という部活をつくったんです。賛同してくれた30人ほどが集まってくれて、この取り組みを広めていく様々な役割を担ってもらいました。

さらに、信頼できる専門家の方々のところへ出向き、アドバイスや指南をいただいたり、多くの食品企業さんにもヒアリングさせてもらいました。今考えると、それら全てを一人で行なっていたのでかなりの激務だったのですが、自分のやりたいことだったので楽しみながら進めていましたね。

現在、チカラを入れているプロジェクトはありますか?

健康経営の中心的取り組み『ウェルメシプロジェクト』では、“食事が変わればカラダは変わる”をテーマにした企画を展開しています。

社員の要望でつくられた健康的な弁当『ウェルメシ弁当』の評判も上々で、多くの予約をもらっています。また、渋谷のお店が検索できるアプリ『ウェルメシ』は、美味しくてヘルシーなお店が選べるということでとても好評で、どんどん広がりをみせていますね。

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渋谷の美味しくてヘルシーなお店をさがせる『ウェルメシ』アプリ

社員の要望でつくられた健康的な弁当『ウェルメシ弁当』。サラダ専門店『サラド』のサラダ、『寝かせ玄米と日本のいいもの』の玄米おむすび。

ほかにも、社内に専門家を招いて「睡眠スキルアップセミナー」などの健康セミナーを行ったり、新たな健康情報を発信したりと様々な取り組みを多角的に行なっています。

スタート当初と今では社員さんたちの意識に変化はありますか?

関心のある人が少しずつ増えてきていることを実感しています。半年に1回、健康経営プロジェクトについてのアンケートをしていますが、直近では回答者の約半数の人たちから「健康への意識が高まった」という回答をもらいましたので、意識改善に繋がっていると言っていいのではと思っています。

『ウェルメシ弁当』も、1日のお弁当利用者600人中100人を越える社員から注文をもらうこともありますので、じわじわと健康への意識が浸透してきていることを感じ、本当に嬉しいですね。

本当のことを丁寧に伝えていくことが大切

平井さんの健康へのこだわりも気になります。

こだわりというよりも、僕にとっては普通の日常的なことなので全然当たり前のことなのですが、他の人からはビックリされることが多くて。日々のルーティン的な内容も加えると、100個ぐらいありますね。

例えば朝のルーティンですと「起きたらすぐに陽の光を浴びる」「水を飲む前に歯を磨く」「発酵食品を摂る」など。ほかにも毎朝、公園に行って呼吸法をして身体の状態を整えたり、鉄棒に足をのせて股関節を伸ばしたり…かな。

「どうしたらそんな風になれるんですか?」「面倒じゃないですか?」などよく聞かれますが、本当に僕にとって日々の単なる流れなんです。確かに健康や食に対する意識は高いと思います。でも意識を高く持っていないと、健康経営アドバイザーを名乗ることはできないですからね。

さすがですね! すぐにできる健康法などありますか?

どこでも誰でも出来ることと言えば、呼吸法です。呼吸とヨガのセルフケアメソッドを提供している森田愛子先生(渋谷鍼灸理学治療室)に教わって実践している深呼吸の方法になります。

深呼吸といえば、ラジオ体操みたいに手を広げてスーハーすることをイメージすると思います。でもそれは“大呼吸”といって、大きなアクションで身体が緊張し浅い呼吸になってしまうもので、深呼吸とは全く別物なんですよ。

本当の深呼吸は、身体の中心を通ってお腹の奥におさまっていく深い呼吸のこと。深い呼吸をするには、身体をまるめて内巻きの姿勢のほうがより効果的です。

そういった本当のことを伝えていき、毎日コツコツ積み重ねていくとが健康につながっていくんですよ。

毎日続けることが大切だとわかってはいるんですが…。

前述しましたが、僕にとって毎日続けるということは普通のことです。実は、僕は今でもプロゴルファーになる夢を諦めていません。ゴルフはずっと続けていますし、時間があればプロのレッスンも受けています。

実際、DeNAに入る直前まで、プロを目指すための準備をしていました。最近は忙しくて全然出来ていないのが悩みなのですが、いずれまたチャレンジするときのために、身体のメンテナンスや健康面には常に配慮していきたいと思っています。

健康は日常生活の延長線上でつくられる

では今の健康ブームの世の中をどう感じますか?

そうですね、やはり迷走している気はしています。健康に関心を持つことはとても良いことだとは思うのですが、なんだか飛び越え過ぎている人が多いように感じることはありますね。

例えば、普段の食やライフスタイルはメチャクチャなのに、思いつきで寺修業や座禅とか行ってみたり。楽しい休暇としての体験ならば問題ありませんが、本気で精神統一のためとか話している方もおられます。

やはり継続性がないものはあまり意味がないと思いますが、小さなきっかけや行動から健康への意識が芽生えることもありますから、一概には無駄とは言えないですね。

健康は日常生活の延長線上でつくられるので、まず睡眠や食事を見直したり、家の中で呼吸法を整えるだけでも違ってくると思います。そういった基礎的なノウハウを広めていくことが僕たちの役割だと感じています。

正しく学ぶための方法があったら教えてください。

以前の僕は何が正しいか正しくないかを知るために、明らかに危険なモノじゃなければ、とりあえず何でも試していました。そして自らの体験から要らないモノを排除していき、正しいモノを選んできました。

その経験からいえることは、「誰が何のためにそれをすすめているか」ということを見極めることだと思います。背景や根っこの部分をよく見ること、その意図はなんなのかを知ることで、正しいか間違いかがわかるのではないでしょうか。

当然ですが、簡単に健康にはなれません。「誰でも簡単」「これだけでOK」とか「すぐに」「みんなはじめてます」などという“営利的な”謳い文句のモノには注意した方が良いですね。

腸内環境をととのえる“発酵食品プロジェクト”構想中

CHO室での新たな取り組み予定はありますか?

たくさんあるのですが、大きく動き始めているのは「腸内環境」を整える「発酵食品プロジェクト」です。健康への意識を高めてもらうため、何を指標に伝えたら良いのかと試行錯誤してきた結果、腸内環境を整えることが一番伝わりやすくて結果が出やすいということにたどり着きました。

今、リサーチやヒアリングをかねて発酵食品の生産者さんをまわって様々なことを教えてもらっています。皆さんのハツラツとしていて健康そのもの。花粉症やアトピーなどのアレルギーなどもほぼなく、うつなどのメンタル的疾患もないそうです。

腸内環境がよくなるとセロトニンが出やすくなり、幸福感を感じやすくなるということは知っていましたが、「ホントに?」という疑問符を持っていましたが、実際に現場を見せてもらってホントに驚きました。この「醗酵食品プロジェクト」をどう展開していくかが今一番の課題です。

「発酵食品プロジェクト」とても興味があります。

このプロジェクトはちゃんと丁寧に段階を踏んで進めていきたいと思っています。発酵食品が良いことは誰しもが認めるところですし、これまで何度もブームのような流行り方をしてきましたよね。そういった一過性の流行りモノには絶対したくはないんです。

なんとなく健康いい、なんとなく美容に効く…という曖昧な伝え方ではなく、しっかりと数字や結果を表したものを作り出していきたいと思っています。実体験や研究結果をまとめた確固たるエビデンスを作りあげていきたいですね。

今後の展開を楽しみにしています。

まずはCHO室でしっかりと発信材料を組み立てて、DeNA社内へ向けて発酵食品の良さを広めていけたらと思っています。その後、培ったノウハウやプログラムを広く社会へ伝えていきたいと考えています。丁寧に進めなければならない事柄ばかりなので時間はかかると思いますが、着実な成果を目指したいですね。

また、健康や食に関して「これを試してみてほしい」など広く発信する場所を探している企業や商店の方がいらっしゃいましたら、DeNA社員2000人に発信して色々な結果を提供することが可能ですので、ぜひ一度声をかけてみてください。

コラム製作 ライター たなべりえ

大卒後、アパレル、出版、印刷、広告、編プロなどなど荒波にもまれて育つ。ライターなのかエディターなのかディレクターなのか…とにかくなんでもします。ひらがな名で活動中。地方の情報誌で編集長をしてた頃、見知らぬストーカーに追い込まれた武勇伝あり。SNSは野球アカとか飲みアカとかtwitterインスタ保持中&facebook塩漬け中。セレブなママ友をいっぱい持っているのがウリ。そこにビールがあればいい、 欲望のまま生きてる庶民です。
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