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【前編】特別対談 UCLA医学部 助教授・津川友介氏 ✕(株)結わえる・荻野芳隆
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【前編】特別対談 UCLA医学部 助教授・津川友介氏 ✕(株)結わえる・荻野芳隆

発売からたった10日間で10万部を突破した「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」(東洋経済新報社)の著者であり、UCLA医学部・医療政策学 助教授で医師の津川友介さんが、2019年7月に(株)結わえるのヘルスケアアドバイザーに就任しました。


本の中で津川さんは、白米や小麦粉などの「白い炭水化物」が健康に悪影響をもたらすこと、逆に玄米などの精製されていない「茶色い炭水化物」が健康に良いことを科学的エビデンスの観点から紹介しています。

今回は、白米やパンなどの白い炭水化物で溢れかえる日本の食生活が今後目指すべき姿について、津川さんと(株)結わえる代表・荻野がディスカッションしてみました。

 

―――津川さんが結わえるのヘルスケアアドバイザーになったきっかけは?

荻野芳隆(以下荻野):知人から「すごくおもしろい人の講演会があるから聞きに来たほうがいい」って言われて、そのときに津川さんの本を読んだのがきっかけでした。その後講演会で実際にお会いして。

津川友介(以下津川):それが2018年10月の講演会ですね。その年の4月に「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」を東洋経済新報社から出版して、6月に一時帰国した時に何名かの友人から「荻野さんという食事に関して素晴らしい活動をしている人がいるので、ぜひ会わせたい」とお声がけいただきました。

荻野:津川さんの本を読んで、これって結わえるのために書いてくれたんじゃないか!?って思うくらい、僕達が提案していることをしっかり書いてくれていて驚きました。今、食品を販売するにはなんでも科学的根拠を求められる時代になってきているので。

津川:食生活や健康に関する分野って情報は多いし、「○○は健康に良い」と言われて、よくわからないのに信じてしまっている人がまだまだ多いと感じています。

荻野:会社が大きくなるにつれて、うちも裏付けの重要性を感じていて。津川さんの本を読んで僕達が提案してきたことは正しかったんだなと、自信になってすごくありがたかったです。

―――津川さんはもともとお医者さんですよね。どういう経緯で食事の分野の研究に進まれたのですか?

津川:私はアメリカのハーバード大学で修士号と博士号を修了しているのですが、そこで食事に関する研究や、データの評価の仕方を学びました。日本の医学部では健康的な食事に関してはほとんど教育されないので、実は日本にいた時にはそれほど食事には詳しくありませんでした。

荻野:そこからどうして食事の本を書くことにつながったのですか?

津川:僕はアメリカに住んでいますが、日本に一時帰国したときに本屋に行って健康に関する本を見てみると、何の根拠もない、間違った内容の本が大量に平積みされていることにショックを受けました。しかも、それらの間違った内容の本が売れているのです。せっかく日本人は健康意識が高くて、寿命が長い国民なのに、このままでは皆間違った食事をしてしまう、と危機感を持っていました。そういうこともあって、ある日、食事に関して医学研究から分かっていることと、分かっていないことをまとめてブログに書いていたら、それを読んだ出版社の方から、「自分が読みたいからぜひ本を書いてほしい」というリクエストをもらって。ちょうど仕事が忙しい時期で原稿を書く時間が取れなかったので、一度はお断りしたんですけど、「食事に関する正しい情報を、一般の人でも分かるように平易な言葉で書いた一般書はない。そういった本があれば健康になれる人がたくさんいる」と強く要望を受けて、たしかにそうだと納得し、本を書くことをお受けしました。

荻野:すごく読みやすくて、わかりやすい内容になっていますよね。

津川:伝える技術って知識とは全然違うので、持っている知識を100%そのままぶつけても、読者はわかってくれません。僕は医者をやっていたので、その病気を聞いたことがない患者さんに外来の限られた時間で、その病気がどのような病気で、どうやったらよくなるのかを伝えないといけなかったんですよ。どういった食事をするべきかという説明をよくしていました。その経験が生きてきて、その内容をはじめて聞く人に伝えるとしたらこういう風に話すというスタンスであの本を書いたんです。正論をまっすぐにぶつけるのではなく、心の底から納得してもらい、自分の判断で食生活を改善してもらうためにはどうやって伝えるべきなのか、ということを意識して。

荻野:それはすごく共感します。僕たち結わえるも、”いろんな知識を身につけて100点を目指したけど途中で挫折するよりも、自分で確実にできる80点ぐらいを目指そう”というところを伝えています。

津川:そうですね。「○○を食べてください」とか、「○○を食べないでください」とか、そういうことをいくら言っても選択肢が無限にありすぎて、だんだんわからなくなってきますから、そうではなくて、食と健康に関する最低限度の知識を身につけた上で取捨選択が自分自身でできることが重要なのだと思います。100点満点をとることは不要だし、正直70〜80点を取ることも難しいと思っています。本を書いたり、講演をしたりしていますが、そういう機会に触れてくれる人ってもともと意識の高い人なので、そうではない人へ伝えるためには、それだけだとまだ足りないと思います。

 

―――もっと具体的な環境整備が必要ですよね。

荻野:いまの日本は玄米を食べ続けるのが容易ではない社会になっています。

津川:日本のレストランは玄米を選べないことが多いですよね。ロサンゼルスやボストンだとごはんを提供しているレストランであればたいてい白米か玄米かを選べるんです。別に高級だったりハイセンスなレストランに限定されないし、値段はほぼ変わらなくて、玄米を選ぶと+1ドルぐらいかな。選択肢として当然ある、という感じなんですよね。たまに日本の友人から「玄米食べられるお店出して」ってお願いされることもあって。私は研究者なのでレストランはやれないのです、ごめんなさい、とお断りしているのですが(笑)。

荻野:それはうちの役割なんで、増やしていきます! 日本とアメリカは環境が違いますよね。

津川:そうなんですよ。環境が整備されていれば、あまり考えなくても自然に選択肢になるんですけど、日本では選べないし、ヘルシーな選択がそもそもできない。お昼ごはんをさっと済ませたいときとか、日本では本当に食べるところがない。白米を玄米に置き換えてくれればそれでいいのに。日本って健康になりづらい社会だと思います。

―――ロサンゼルスではどうしてこんなに玄米は良いと認知されるようになったのですか?

津川アメリカだと、国をあげて健康のために精製されていない炭水化物を食べなさいって啓蒙されていますね。ロサンゼルスでは、白米より玄米が良いのは当たり前だし、小麦粉より全粒粉が良いのも当たり前です。医療や食事を専門としている人からすればごくごく当たり前のことだと思います。

荻野:でもアメリカって広いじゃないですか。全米的にみても白米と玄米を選べるところが多いですか?

津川:そうですね、東海岸・西海岸の人々はお米を食べるのですが、田舎に行ったらさすがに選択できないと思います。レストランでも誰が客層かによるかもしれませんが、ある程度健康意識の高そうな人が行くところは基本的に白米か玄米か選ぶことができます。

荻野:アメリカってお米を食べるという食文化ではないのに玄米が浸透しているっていうことが不思議だな。日本は米の消費量が年々減っていて、過去30年ぐらいで消費量はついに半分になっているのに、なぜ未だに白米にこだわりがあるのか謎です。

津川:ハーバード大学でも言っていますし、アメリカ政府も推している。玄米や全粒粉などの「精製されていない穀物(”茶色い炭水化物”)」が身体に良いということは議論の余地がない。日本が置かれている状況って世界水準からのギャップを感じます。

荻野:日本では議論どころか、まだまだ少数派ですよ。

津川:”健康のために塩分を減らしましょう”というのは日本人も知っていますよね? アメリカではそれと同じくらい常識なのに、白米について日本では”量を控えれば良いのでしょう”という感じで、”白米を玄米に置き換えましょう”とはならないんですよね。玄米は健康的だけでなく、味もおいしいと思うんですけどね。

荻野:僕たち結わえるが製造している「寝かせ玄米」は、圧力をかけて炊飯してもっちもちになったもので、これならまずいという人はいないですよ。

津川:そうですよね。「寝かせ玄米」もあるし、白米を玄米に置き換えるだけで済んでしまうのに、何を恐れているのかわかりませんが広がりませんね。

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コラム製作 まっちゃん

広島県出身。大学卒業後、興味のあった中国へ語学留学し、そのまま4年間暮らし、改めて日本食のおいしさと日本文化の優しさを実感。帰国後すぐに上京し東京で13年間働く。結婚後長野県東御市に移住。宗教・歴史に興味があり、長野県移住後は諏訪地域の神仏習合や縄文遺跡にはまって散策しています。普段は玄米食で、一汁三菜の常備菜を食べ、早寝早起きの健康ライフを送っています。
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