Patina歳時記|新茶の季節を告げる八十八夜、日本独自の暮らしに密着した「雑節」とは?
肌寒い日も日に日に減り、気候の安定した季節になりました。
この時期は春野菜などの食材もおいしいですが、おいしい新茶も楽しめる季節。暦的には「夏も近づく八十八夜〜♪」という歌い出しからはじまる「茶摘み」の歌にもあるように、新茶の季節を告げる「八十八夜(はちじゅうはちや)」ももう間近です。
しかし、一般的には行事として何かを祝ったりするわけではないので、「八十八夜」という日が何なのか、実際はピンとこないですし、そもそもいつから数えて八十八夜?暦の上でどんな役割を果たしているのでしょうか?
八十八夜とお茶
八十八夜は季節を知らせる「雑節(ざっせつ)」のひとつです。
なぜ「八十八夜」というかというと、立春から数えて88日目をさすため。立春は毎年2月4日頃なので、八十八夜は毎年5月2日頃になります。
実際に新茶(一番茶)の茶摘みが行われるのは4月下旬から5月上旬なので、ちょうど八十八夜のころに摘まれる茶葉が新茶として楽しまれ、6月下旬から7月上旬に摘まれるのが二番茶。8月下旬に摘まれるのが三番茶と言われています。
新茶は、寒い冬の間に養分を蓄え、春の訪れとともに芽吹いた「茶葉の新芽」なので、二番茶以降の茶葉に比べて苦味や渋味のもとになるカテキン・カフェインが少ないのが特徴。
さらに、旨味のもとであるテアニンという成分が豊富に含まれていて、新茶らしいさわやかさの中に旨味や香りも際立って、一年の中で一番美味しいお茶と言われています。
今でこそ、コンビニに行けば100円でペットボトルのお茶が買えてしまう時代ですが、かつては高級品だったお茶は、1200年もの歴史がありながら、大正時代頃までは庶民にはなかなか手の出ないものだったのだとか。
そんなお茶が採れる八十八夜は、きっと今よりもずっと特別な日だったのでしょう。
お茶だけじゃない。農業のはじまりを告げる八十八夜
「八十八」は、組み合わせると「米」になり、農作業と縁の深い言葉ですが、実は八十八夜と言われる5月はじめのこの時期も、農家さんでは稲の種まきがはじまる時期でもあるのです。
あたたかくなり、農作物が芽を出しはじめるこの季節。農作業もスタートさせたいところですが、4月はまだ急に冷え込む日があったりして霜が降りることもあります。
そういった「遅霜」になると、農作物は大きな被害を受け、せっかくの農作業も台無しに…
5月上旬になると気候も安定してくることから「八十八夜の別れ霜」と言われ、安心して農作業に本格的に取りかかれるようになることから、八十八夜は農業のはじまりを告げる雑節とも言われているのです。
季節を告げる雑節ってそもそもなに?
日本には「二十四節気」や「五節供」など、中国から伝わった暦がありますが、節分をはじめとする「雑節」は日本独自のもの。
内容は儀式的なものではなく、主に農作業をするのに適した時期をしるための目安となっているものが多いのが特徴です。
日本の気候や風土に合わせた暦である雑節は、日本人の暮らし・生活文化に根ざした暮らしの知恵の集積とも言えます。
雑節の種類
節分(せつぶん)|立春の前日、2/3頃
彼岸(ひがん) |春分と秋分をそれぞれ中日とした前後7日間
社日(しゃにち)| 春分と秋分に最も近い戊の日
八十八夜(はちじゅうはちや)|立春か88日目、5/2頃
入梅(にゅうばい)|立春から135日目、6/11頃
半夏生(はんげしょう)|夏至から11日目、7/2頃
土用(どよう)|立春、立夏、立秋、立冬の前のそれそれ18日間
二百十日(にひゃくとおか)|立春から210日目、9/1頃
二百二十日(にひゃくはつか)|立春から220日目、9/11頃
気温の変化の他に、農作業において重要な雨季を知るための「入梅」や、「二百十日・二百二十日」には災害から農作物が無事に守られ、五穀豊穣に恵まれることを祈り「風祭り」というお祭りが行われる風習が残っていたりと、いかに日本人の暮らしと農作業とが密着したものであったかがよくわかります。
現代の暮らしの中では雑節に込められた季節の移ろいを感じ取る機会は少ないですが、普段私たちが食べているお米や野菜などを作ってくれている農家さんにとっては昔も今も、自然との戦いであることには変わりありません。
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