街を照らし、地域と東京を結ぶ。おむすびスタンド「ANDON」@日本橋
日本橋にある「ANDON(あんどん)」というお店をご存知でしょうか?
ANDONは「おむすびスタンド」としておむすびを提供している飲食店ですが、美味しい秋田のお米を使い、オーダーが入ってからひとつひとつ作るという、
こだわりのお店で、美味しい「むすびたておむすび」が味わえることで人気です。
真っ黒な木のファサードに黄色のネオンサインで「ANDON」と書かれた店構えでオフィス街に佇む姿は、はおむすび屋さんというより、バーのようなかっこいい外観!
…と思っていたら、実際に夜は立ち飲みスペースとしてお酒も楽しめるそうで、さらに、1階はおむすびスタンドとして、2階では「食×カルチャーの最新型長屋」として本も販売しているという一風変わったお店です。
そんな、ただのおむすび屋さんとは思えない多様な展開をされているANDONのことが気になって、店長の竹田勝平さんにお話を伺いました!
ANDONが生まれたきっかけとは?
元々「ANDON」は、秋田の魅力を東京に繋ぐ場所として立ち上げられたお店です。ANDONを立ち上げた「株式会社kedama」代表の武田昌大さんは、出身地である秋田に人を集め、魅力を伝えたいと、様々なプロジェクトを手がけています。
かっこいい農業を目指す「トラ男」
秋田県米を生産する若手農家集団「トラ男(トラクターに乗る男前農家集団)」では、専業農家の3代目の男前たちが、「きつくて稼げない」イメージの農業から、「夢が持てる、やりがいのある、嫁がやってくる」=かっこいい3Y農業を目指すプロジュエクト!
一般的なお米は、銘柄ごとに色々な農家さんのお米が混ぜられた状態で売られていますが、トラ男のお米はブレンドなしの、生産者の顔が見えるお米として販売しています。
古民家がみんなの「村」に?シェアビレッジ町村
また、秋田の古民家をみんなの古里として蘇らせてシェアする「シェアビレッジ町村(まちむら)」プロジェクトも。
秋田県五城目町にある立派な茅葺き屋根のこちらの古民家、住み手がおらず取り壊される予定だったそう。
どうにかして古民家を残したい。しかし、かといって維持費を個人でまかなうのは難しい…そこで、維持費をシェアして払い、みんなが里帰りできる場所にするというシェアビレッジという仕組みを運用することにしたのだとか。
一般的なクラウドファンディングのように投資して、インセンティブなどのリターンがあって終わりではなく、自分の第二の故郷としてずっと繋がっていけるシェアビレッジ。
古民家のことを「村」、会員さんのことを「村民」と呼び、年会費である「年貢」を納めることで「里帰り」という名の宿泊ができてしまうという、ユニークさや、その中で村民同士や地元の方と仲良くなれる故郷として人気を集めています。
さらにこの取り組みが評価され、2015年にはグッドデザイン賞を受賞!2016年には香川県に2つ目のビレッジ「シェアビレッジ仁尾」もオープンしています。
一方で、中々シェアビレッジに行けない村民が集まったり、東京の人に伝える場所が欲しいという思いから、ANDONが生まれたそうです。
アンテナショップとは違う?地域と東京をつなぐANDON。
おむすびで秋田の美味しいお米を食べられたり、具材はいぶりがっこや、ぼだっこ(塩紅鮭)なども。お酒も秋田のものをメインに飲み比べもできるANDON。
しかし一方で、おむすびを注文しなくても2階の本屋さんを利用できたり、他の地域のものも食べられたりと、あまり「秋田推し」な店作りやメニュー展開はしていないそう。
あの魅力的な店構えといい、どんなコンセプトで展開されているのか、店長の竹田さんにお話しいただきました。
「元は、秋田と東京を繋ぐ場所として立ち上げたANDONですし、確かに、秋田のアンテナショップのような店作りをすれば、県から補助金がもらえたりと運営は楽になります。でも、そうしたら秋田のものしか扱えなくなるし、ANDONはそういうものを目指していないんです。」
と竹田さん。
「そもそもおむすび屋さんというスタイルを選んだのは、秋田のお米を食べて欲しいというのもありますが、お米をベースに他の地域の具材を入れてコラボができるからなんです。シェアビレッジも秋田だけでなく香川でも展開していますし、色々な地域を知ったり盛り上げたりできる場所にしていきたいんです。」
「本屋さんを展開しているのも、秋田やおむすびに興味のない人も来られるようにして、来店のきっかけをつくるためです。特に目的がなくてもふらっと入れる場所にできたらと。」
本棚には、土地柄、江戸や日本に関する本もあれば、食、さらには、お米やおにぎり・おむすびの本まで。
「もっと秋田を知って欲しい!」「もっとお米を食べて欲しい!」と、強く訴えるスタンスではないためか、気軽に入れて、またふらっと来ようと思える空気感があります。
「本当はもっと、秋田推し、お米推しじゃない感じにする予定だったんですよ。でも、店舗のデザインに関しては、リフォームをお願いした「つみき設計施工社」さんの提案が魅力的で、外装に秋田杉の焼き杉を使ったり、内装も秋田の銅をつかって「お櫃」をイメージしたものにしてもらいました。」
「一方で、しっかり伝えたいことは手間をかけてでも伝わるようにしています。」
消費者の私たちはあまり気に留めることも少ないですが、いいお米を育てても、消費者の手に届くまでにいろいろな農家さんのお米が混ぜられてしまって、作り手の想いや味がダイレクトには伝わりづらいことも。また、購入いただいた後も炊き方が悪いと本来の美味しさを損なってしまうという課題も。
そのため、ANDONでは生産者の顔が見えるお米で、炊きたて・むすびたてのおむすびを提供したり、時にはお米マイスターを呼んで炊き方講座も開催しているそう。
また、「寄り合い」と呼ばれる飲み会では、新作おむすびの具を何にするか、お客さんからもアイディアをもらったりもするのだそう。
気軽に立ち寄れて、一手間かけられた本物の味を楽しめる。そして、一方的に何かを提供されるだけじゃなくて自分も参加できるという、「居場所」としての魅力が、ANDONにはあります。
ちなみに、「ANDON」という名前には街を照らす「行灯」という意味の他に「AND ON」=続けるという意味も。
いまは、色々は人や企業がSNSやクラウドファンディングなども活用して、「はじめ」やすい時代にはなったけれど、それを続けるのは難しい。
「ANDON」には、そんな中でも一つのことを続けていくとうい想いも込められています。
シェアビレッジも、今年1軒、来年はまた一軒と、各地に展開していくそうで、まさに行灯のように街を照らしながら、日本の魅力にもスポットを当て、伝える「ANDON」。
ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか?