【ツマめしレシピ】16|ぬか漬けのコツを抑えて菌活・腸活しよう!
ごはんとしてだけでなく、呑んべえならではの「ツマミとして酒が進むか」も重視したレシピをご紹介!
以前ご紹介した、ぬか漬けのはじめ方。
【ツマめしレシピ】12|【ぬか漬けはじめました】だしパックでつくる、簡単ぬか漬け。
変わり種のぬか漬けレシピもご紹介しています!
【ツマめしレシピ】15|【ぬか漬け漬かりました!】変わり種食材いろいろ!
「おいしくできた!!」
という方もいれば、
「なんか、変な匂いがする…」
「なかなか乳酸発酵せずに、酸っぱくなくただしょっぱい…」
「イマイチ美味しくならない…」
と、めげてしまいそうな方もいるのではないでしょうか?
今回は、ぬか床の手入れのコツをお伝えします!
ぬか床が臭い?まさか、腐ってる?
お世辞にも「良い」とは言えない匂いがぬか床からする場合があります。はじめての方は「こういうもの?」と思うかもしれませんが、ちゃんと手入れをして、菌のバランスの良いぬか床はフルーティーというか、芳香な良い匂いがします。
しかし、臭い匂いがするからといって「腐らせてしまった…」と諦めるのはまだ早いです!
ぬか床に住む菌について知って、復活させましょう。ぬか床には主に3つの菌がいます。
産膜酵母|酸素が好きな菌
「なんか表面に白いカビのようなものが!」
「シンナーのような刺激臭がする…」
という場合、その正体は「産膜酵母」という酵母菌です。
表面にびっしり白いものが生えている様子は結構ショッキングなものがありますが、これは危険な菌でも、腐ってしまったわけでもないので大丈夫です。
「カビかどうか」と言えば酵母はカビの仲間なので間違いではありません。ただ、チーズもカマンベールなどカビで発酵させているものがあるように、人にとって有用な菌で、酸素が好きなのでぬか床の表面にいます。
そんな産膜酵母は、ぬか床で乳酸菌が増えるためには必要な菌でもあります。空気が嫌いな乳酸菌は、表面に産膜酵母があることで元気に増えることができるのです。
ホーローのケースなどではなく袋で漬ける場合、最初からあまりぴったりと密閉してしまうと、この産膜酵母が育たず、乳酸菌も増えないことがあるので、混ぜたあとに少し袋を開けて表面を空気に触れさせてみてください。
ただし、そのまま放置は禁物。本物のカビが生えてしまったり、産膜酵母が増えすぎてもぬか漬けの風味をそこなってしまいます。
1日1回、しっかりと手で混ぜてぬか床の中に入れてやることで、バランスが保たれて風味も豊かになります。
乳酸菌|酸素が嫌いな菌
ぬか漬け独特のあのすっぱさを生み出し、美容・美肌・健康効果をもたらす乳酸菌。
乳酸菌は実は酸素が苦手です。酸素があっても死にはしませんし、そもそも空気中にも存在していますが、酸素が無い状態の方が活発に増えることができるので産膜酵母の下、ぬか床の真ん中あたりに増えます。
そのため、表面に「産膜酵母」が増えすぎたり、このあと説明する底面にいる「酪酸菌」が増えすぎると、居場所がなくなって働きが弱くなり、ぬか床が臭い匂いを発してしまいます。
つまり、「酸素が嫌い」と言いながら、混ぜてやらないと活動できないというのが乳酸菌の特徴です。
酪酸菌|酸素があると活動できない菌
「ぬか床臭くっっっさ!!」
の原因とも言える匂いを発するのはこの酪酸菌。よく、雑巾やくつ下の匂いに例えられるほど、臭い匂いです。
酪酸菌は酸素がないところで増えるので、ぬか床の底に増えていきます。ぬか床を放置するとこの酪酸菌が増えすぎてあの嫌な匂いの原因になってしまうのです。対処法は簡単、やはりぬか床を混ぜることで酪酸菌を酸素に触れさせ、異常に増殖するのを防ぐことができます。
とは言え、酪酸菌も臭いだけの嫌われ者というわけではなく、腸内フローラのバランスを整える効果がある善玉菌のひとつです。しかも、乳酸菌が活躍できるのが小腸までなのに対し、酪酸菌がつくる酪酸は大腸がエネルギー源として活用できるのです。
つまり、対処法はとにかく1日1回ちゃんとかき混ぜること。
※難しい場合は冷蔵庫に入れれば2〜3日に1回ですみますが、ぬか床にとってベストな温度は20〜25℃なので、できるだけ常温で管理することをおすすめします。
そして、「臭い」=「悪者」ではなく、どれもぬか床には欠かせない菌。
きちんと混ぜてその「バランス」を整えることが大切なのです。
酸味が足りない…
一方、待てど暮らせどしょっぱいばかりで酸味が出てこないという方もいるのではないでしょうか?
考えられる理由は、乳酸菌不足です。乳酸菌不足になると、美味しくないという味の問題だけでなく、雑菌などの他の菌の繁殖にも繋がってしまうので、早めに乳酸菌が増えるように環境を整えてやる必要があります。
野菜の捨て漬けは足りている?
野菜の捨て漬けの回数が少ないとなかなか乳酸発酵が進まないことがあります。
実はぬか床は、野菜に含まれる乳酸菌がぬかを栄養にして増えることで完成します。つまり、水と塩を足しただけのぬか床をいくら毎日混ぜても意味がないのです。
最初のうちは5日程度しっかり野菜を漬けて、出てきた水分をぎゅっと絞ってぬか床に戻します。
野菜が勿体無い気もしますが、ケチらずしっかりと漬けましょう。
捨て漬けした野菜はスープや炒め物、細かく刻んでタルタルソースのようにマヨネーズで和えてソースにしても食べられますよ!
ぬか床をかき混ぜ頻度は適切?
ぬか床の手入れの基本は
・かき混ぜること
・捨て漬け野菜を漬けること
ですが、「混ぜなきゃ!!」と意気込んで最初から1日に何度も混ぜていませんか?
実は、ぬか床をはじめたばかりの段階では、混ぜすぎがかえって発酵を遅らせてしまうことになります。
先ほどご説明した通り、乳酸菌は酸素がない環境で増えます。そのため、乳酸菌が増えていない段階であまり頻繁に混ぜてしまうと、働きが弱まってしまいます。そのため、最初は毎日ではなく2日に1回程度に混ぜる回数を抑えるのです。
ぬか床が美味しくなくなった…
野菜を漬けているとぬか床の環境は変わってきます。せっかく美味しいぬか床ができたのに、だんだん味が落ちてきた??なんてことも。
ぬか床は使い捨てではなく、上手に手入れすれば何十年も使って熟成が進んだ美味しいぬか床に育てることもできるので、味が変わってきたときはメンテナンスをしてあげましょう。
ぬか床が水っぽくなっていない?
ぬか漬けに塩気があるということは、当然ぬか床の塩分が減っているということです。そのまま野菜を漬け続けると、水分は増えるし、塩分は減るしで、雑菌が繁殖してしまう原因に。味も落ちてしまいます。
そもそも、塩分には多くの雑菌の繁殖を抑える働きがあります。しかし乳酸菌は塩分を好む性質があるので漬物などが「腐敗」ではなく「発酵」することができるのです。そのため、乳酸菌にとっても塩分は重要なものです。
水分と塩分の調整のためには、ぬか床は時々「足しぬか」といってぬかと塩を足す必要があります。
量はこのくらいと決まっていません。と言うのも、足しぬかをするにはぬか床の状態、味を見てぬかと塩を足すことになるので、ベストな状態のぬか床を少し食べて味を覚えておく必要があります。
また、野菜を漬ける時に軽く塩もみすることで、
・余計な水分が先に抜けてぬか床がユルくなりにくい
・早く漬かりやすくなる
・ぬか床の塩分も維持しやすい
とういメリットがあるので、塩もみをしましょう。
(塩もみしない食材もあるので事前に確認してから。)
ぬか漬けが苦くなってきた?
すごく水っぽいわけでも塩が足りないわけでもないのに、なぜかぬか漬けが苦くなってきた…という場合は苦味の出る野菜を漬けすぎている可能性があります。
その代表とも言えるのがぬか漬けの定番「きゅうり」です。
実はきゅうりには苦味成分があり、特にヘタの部分に多く含まれています。漬けるときは切り落としてから漬けるようにしましょう。
そして、きゅうりに限らず同じ野菜ばかり漬けることも良いことではありません。特定の成分がぬか床に蓄積してしまって味のバランスが悪くなる原因に。なるべく色々な種類の野菜を漬けることが、美味しいぬか床を維持するコツです。色々な野菜と摂ることで健康にもつながります。
また、発酵のしすぎで苦くなることもあるので、しっかり混ぜて、夏は暑い部屋に放置せずにクーラーの効いた部屋や保冷剤を利用して涼しい環境で保管するようにしてください。
あと一歩、旨みが足りない?
不味くはないけど、美味しくもない…
というなんとも言えない残念な仕上がりに困っている方には、旨み成分の出るものを足すことおすすめします。通常は煮干しなどを個別に入れるのですが、合わせだしのパックなら袋を破いて入れるだけで椎茸や鰹節、昆布など色々な食材の旨味がちょうどいい量足せて便利です。
足しぬかをしていくと、だしパックの割合も減ってくるのでタイミングを見て追加するようにしてください。
ただし、乾物とは言え動物性の食材をたくさん入れると腐敗の原因になることもあるので、入れすぎには注意です。
天然だしパック
http://www.nekase-genmai.com/goods/226
その他、意外に重要なのが、「素手でかき混ぜる」ということです。
「雑菌が入ってしまうのでは?」と、手袋をしたり、袋の上からしか混ぜなかったりする方もいると思いますが、実はそれがイマイチ味がしっかり決まらない原因になっていることがよくあります。
実は皮膚には「常在菌」という菌が住んでいて、素手でかき混ぜることで、ぬか床に良い影響を与えると言われています。
「え!手の菌!汚いのでは?」
と感じる方も多いと思いますが、常在菌というのは私たちの体の皮膚や内臓などいたるところにいて、雑菌が異常に繁殖しないようにバランスを保ってくれる存在でもあります。
ぬか床の菌についても説明しましたが、菌は「この菌だけ欲しい。他の菌はいらない。」というように都合よく扱えるものではないのです。色々な菌がいて、絶妙なバランスを保っているのです。
昔ながらの自然な酒づくりをする「寺田本家」も、菌を大切にした酒造りをしています。
「菌」と共に生きる酒蔵。昔ながらの自然酒造りで、旨くて体にいい日本酒を醸す、寺田本家。@千葉
勘を大切に。
コツを知識として知る事は大切ですが、ぬか床に限らず料理には「勘」が大切だと思っています。
はじめてでは上手くできなかった料理も、何回も作っているうちに安定して同じ味つけにできるようになってきますよね。毎日お味噌汁を作っているのに毎回お味噌をきっちり計量している人は少ないのではないでしょうか?
ぬか漬けも、毎日ぬか床を少し食べて味の変化を敏感に感じ取ったり、美味しい時の味や香りを覚えて置くことで「もう少し塩を足した方がいいな」「足しぬかしてから酸味が足りないからかき混ぜの回数を減らしてみよう」と、そのとき必要なことが自然とわかってきます。
計量することが悪いことではありませんが、細かい計量や温度管理をしていなかった昔の人が美味しいぬか漬けを食べられたのは、そうした勘を働かせてきたからではないでしょうか?
もちろん失敗も何度も繰り返しながら、「おお!なんか今回調子いいじゃん!!きっとこうしたからだ!」と、勘が当たったときの喜びを知ると料理はもっと楽しくなると思います。
だからこそ、「料理が苦手」「ぬか床なんて失敗しそうで怖い」と思っている人にこそ、挑戦してみてほしいなと、わたしは思います。
プロの料理人の元で修行したり、資格を取ったりも素晴らしいことですが、知恵を使って勘を働かせて毎日作って食べる家庭料理ほど、持続可能な暮らしのヒントがたくさん詰まった面白いものはないと思います。